読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

無量一読

わりとなんでも読む読書中心の感想ブログ。

ハイドラ

小説

 

ハイドラ (新潮文庫)

ハイドラ (新潮文庫)

 

 

 

芥川賞受賞作「蛇にピアス」が刊行された当時、私も読んでいまして、その時はまだ読解力諸々が未熟で何が何やら分からない本だなという印象しかありませんでした。

あれから十年以上経ち、そろそろ色々と理解出来るのではとこちらの本をチョイス。

リアリティというよりも生々しさを持って迫ってくる作品でした。

 

有名カメラマン新崎の専属モデルである早希は新崎と同棲生活をしているものの、セックス以外では触れられることのない生活を送っています。

やがて早希は自身のファンであるバンドマンの松木と出会い、揺れ動くように。

摂食障害を起こしながらもひたむきに愛を求める主人公の姿が見られる作品で、ストーリーとしてはびっくりするような仕組みはありません。

根底にある文学性は、やはり生きている年数が増えればそれとなく読み取れるようになるもので、すんなり入って来ました。

カメラマン、バンドマン、そしてモデルと特殊な世界に生きている人々であるからか、ちょっと浮世離れしたところも美しく感じられます。

松木を選べば幸せになれるだろうに、と思うところもあるのですが、理想的な形にならないのがこの作者らしさとも取れるし、ある意味では現実的だなと思えるところでした。

ちなみに解説は瀬戸内寂聴さんです。現実感を持って物語が着地したところで非常に安心感を覚える内容でした。