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無量一読

わりとなんでも読む読書中心の感想ブログ。

シャクンタラー姫

東洋の文学

 

シャクンタラー姫 (岩波文庫 赤 64-1)

シャクンタラー姫 (岩波文庫 赤 64-1)

 

 

 

日本の文学、西洋の文学ときたら、中国やインドなどアジアを中心とした東洋の文学カテゴリーがあるべきなのでしょうが、どれを1冊目にするかで悩みました。

ここは意外と馴染みが薄いインドの作品を、ということで「シャクンタラー姫」を読みました。

もう初めて読んだ時から大分時間が経っていて、内容をあまり覚えていなかったので楽しめました。

 

「シャクンタラー姫」は戯曲で形式も小説のものとは違います。作品のほとんどを歌が占めています。

著者のカーリダーサは4世紀から5世紀あたりに生きていた詩人らしく、信頼できる資料が少ないため断定できないのだそうです。

無論「シャクンタラー姫」もその頃作られた作品なのですが、天女と人間の間に生まれたシャクンタラー姫と、プル族の王ドゥフシャンタの恋愛の物語です。

最初に登場人物と各幕の舞台についてまとめられているので助かりました。

いざ読んでみると、登場人物の名前や使われている単語(本作は訳注が充実していて読みやすいです)に馴染みがないだけで、障害を乗り越えてハッピーエンドを迎える恋愛、という形式が千五百年以上前から定まっていたことに一番驚きます。

好きな言い回しは多々あるのですが、一番は第三幕「恋の享楽」での王の「恋の神よ、そなたは花を武器としながら、この苛烈さはどこから来るのだ。」という一節です。

恋に悩んでいる人間が、結果がどうであれ神や運命を恨むのは万国共通だというのが分かります。

巻末には本編の他に「カーリダーサとその作品」「サンスクリット劇入門」が収録されていて、この二つも読み応えがありました。

サンスクリット劇は非常に制約が多く、その中で最高傑作として残っているのが本作だということを考えると、恋愛というテーマが千年後や二千年後にどう描かれるようになるのか気になるものです。