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無量一読

わりとなんでも読む読書中心の感想ブログ。

夜の来訪者

西洋の文学

 

夜の来訪者 (岩波文庫 赤294-1)

夜の来訪者 (岩波文庫 赤294-1)

 

 

 

文学カテゴリーは「日本の文学」「東洋の文学」「西洋の文学」の三種類を作る予定ですが、1冊目は軽めに。

夜の来訪者」はイギリスの劇作家プリーストリーが1946年に制作した劇で、舞台劇としても上映されていた模様。

作品も舞台劇の脚本のような文体でストーリーが進みます。

 

バーリング家は裕福な家庭で、一家の大極柱であるアーサー・バーリングは工場を営んでいます。

妻のシビル、娘のシーラとその婚約者のジェラルド、息子のエリックの四人が、シーラの婚約を祝う団欒の最中に、グール警部と名乗る警察官がやって来て、エヴァ・スミスという一人の女性が自殺したことを告げます。

その場にいる人物は、それぞれ異なるある場所でエヴァと関わっており、バーリング氏がエヴァを解雇したところから、自殺に至るまでの全容がグール警部によって明らかになります。

自分達が関わった女性が一人亡くなったという事実を前に、シーラは反省を見せるものの、他は罪をなすりつけ合ったり、自分は関係ないと主張したり……

発端はバーリングがエヴァの賃上げの要求をはねつけたからですし、エリックも相当ひどいのですが、トドメとなったシビルが一番酷いように感じられますね。そしてまさかのオチ。

結局のところグール警部が何者なのかは判明しないのですが、一家の後の凋落を考えると、溜め息が出ます。

一家の中では、程度の差こそあれ一番ひどくなかったはずのシーラが一番悔いているというのが印象深いです。

ミステリー色が強く、無意識のうちに働いている悪への非難や、表向きには善良な人物の本心に迫る物語で、最後までドキドキしながら読みました。

これだけ短い文量の中で、ミステリー、社会風刺、善悪の在りよう全てが成立している良作です。